仕事しながら横目でチョロっと『安堂ロイド』とかいうドラマを観たんですけどね。失笑ものの駄洒落タイトルからして残念な感じですが、違う角度から眺めるとなかなか趣深いものがあります。
さすがに切れ味が衰えた往年の視聴率男、もはや搾りカスの価値しか残っていない元AKB、なぜ降ろされたのかキナ臭い『ガリレオ』の旧ヒロイン。2000年代の墓標とも言うべき絶妙なキャスティングだと思ったのは僕だけでしょうか。この何とも言い難い時代遅れ感、前クールが「半沢直樹」だった枠とは信じられません。
何よりストーリーが陳腐なことこの上ない! ロボットやアンドロイドが人間を殺すのに逡巡する話って、これで一体何回目でしょうか? ちょっと文化的素養のある人なら、アイザック・アシモフをはじめフィリップ・k・ディック、手塚治虫らの著書でこの手のSFはもうお腹いっぱいのはずです。主人公のアンドロイドが実在青年のコピーという筋立ても過去一度や二度ではないですよね。オマージュとかももう要らないです。
まぁ局側はすべてのドラマに全力投球なんてできないだろうし、作品毎に異なる役割を持たせてるのは容易に想像がつきます。だいぶ減ったとはいえキムタクならとりあえず観るというジャニオタBBAなんて絶対に逃したくないカモのはず。そういうバブルの残滓みたいなものに縋り付いて離さないところがTVというメディアの斜陽を如実に物語っているわけです。
ここのところ小説を原作にしたヒネリのあるドラマが増えてきたかなと思ってたんですが、まだまだ切り捨てられない”しがらみ”みたいなのが制作側にはたくさんありそうで。
「日本のドラマ、怖い。不倫と人殺すばかり」
これ、大阪のとある中華料理屋で雇われ店主してた中国人留学生に言われたんですけどね。
言われてハッとしましたよ。そういえば8割がたそんなドラマばっかですよね、平日の昼下がりは欲求不満な奥様が若い男を物色してるし、毎週土曜の夜はお約束の殺人パーリナイ。初めて日本を訪れた中国人の目には、日本人のインモラルぶりは常軌を逸してるように映ったに違いありません。
ダメな映画を盛り上げるために簡単に命が捨てられていく~♪
[HERO] by Mr.Children
ぶっちゃけ超恥ずかしかったですね。知らない間に「私はアホです」と書いた紙を背中に貼られて街中を闊歩していたかのような。文化の違いがダイレクトに伝わる、これこそが本当の”国際感覚”ではないでしょうか。高校時代「英語ができるからって国際人になれるわけじゃない」と世界史の先生に口酸っぱく言われたのを思い出します。
別に不倫や殺人をモチーフにするのが悪いと言いたいわけじゃないんです。ドイルもクリスティも乱歩も最高です。ただ、そればっかりってどうなの?っていうだけで。クリエイティヴとしてもっと別の表現方法、取材対象は無いんですかと問いたい。ジャニーズ枠も少しぐらいあっていいけど、個人的には演劇畑叩き上げの役者魂をもっとTVでも観たい。
地方局が自主制作したドキュメンタリーにめちゃくちゃ面白いのがゴロゴロあるんだけど、スポンサーありきの糞つまんないドラマ垂れ流すぐらいならそれを定期的に放映してくれないかな。日本海テレビジョン放送が98年に制作した「クラウディアからの手紙」はマジでぼろっぼろ泣きました。ドラマ化されたのがYouTubeに上がってますが、それちらっと観ただけでもウルウルきます。
蛇足ですが…
件の中国人留学生に「やっぱり日本のほうが収入がいいの?」と尋ねたところ、「とんでもないね。給料はいぱいもらえるけど、国に払わないとタメ」とのこと。日本に留学して学校に通いながらアルバイトして、さらに国にお金払うってどういうこと???
なんでも、留学する前に中国で勤めていた会社に与える損失分(留学してる間の労働力)を補填しなきゃいけないそう。奥さんと子供の生活費も送らなアカンからもう死にそうね、と目の下に隈を作りながら笑ってました。
日本人は恵まれてるとかどうとかじゃなく、余力があるうちに出来ることやっとかないと明日は我が身ですね。